2018/01/02 - カテゴリー: BLOG, oil on the spoon
oil on the spoonの由来

名前の由来は、ブラジルの作家、パウロ・コエーリョが書いた『アルケミスト』からきています。
この本と出会ったのは今から10年ほど前です。
その頃の僕は仕事にいっぱいいっぱいで、毎日がしんどくてとても苦しい思いをしていました。
原因は、理想とする人生と現実が大きくかけ離れていて、あきらかに実力不足、身の丈にあっていないのに、そのギャップを埋めようと強がって背伸びをしていたからです。
職場でも家に帰ってきてからも常にピリピリ、やらなければならないことをこなすのに精一杯で、仕事もプラベートも楽しむ余裕などありませんでした。
そして、ある日突然、婚約していた彼女に言われました。
「もうこれ以上一緒にいることはできない」
いつも緊張感いっぱいで余裕のない僕に嫌気がさして、彼女は僕のもとから去っていきました。
その時思ったんです、「あ、俺、根本的に間違えてたかも」って
彼女を失うことに比べたら僕が追い求めていた出世やステイタスといったものは全く価値のないものに思えました。
自己嫌悪と自己否定で最悪な状態の中、なにげなく手にした本の小話がとても心に刺さりました。
“幸福の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ”
人生はやらなければならないことで溢れています。
でも、それだけではダメで、人生を謳歌する、人生を楽しむということも大切なんだということを小話は語っています。
「やるべきことはしっかりやる。それと同じだけ、人生を楽しむ。」
これが今の僕のポリシーです。
このポリシーを体現するしかりとした価値を顧客のみなさんに提供できるよう、象徴するアイテムに思いを託し、“oil on the spoon”と名付けました。
幸福の秘密 by 『アルケミスト』
ある店の主人が、世界で最も賢い男から幸福の秘密を学んでくるようにと、息子を旅に出した。その若者は砂漠を40日間歩きまわり、ついに山の山頂にある美しい城に行きついた。賢者が住んでいたのはそこだった。
しかし、この若者はすぐに賢者に会えたわけではなく、城の一番大きな部屋に入ってゆくと、そこでは、さまざまな人が忙しそうに働いているのを見た。貿易商人たちが行ったり来たりしていた。隅の方では、人々が立ち話をしていた。小さなオーケストラが、軽やかに音楽を奏でていた。テーブルには、その地方で一番おいしい食べ物を盛り付けた皿がいっぱい並べられていた。賢者は一人ひとり、すべての人と話していたので、少年は2時間待って、やっと自分の番がきて、賢者の注意をひくことができた。
賢者は注意深く、少年がなぜ来たか説明するのを聞いていたが、今、幸福の秘密を説明する時間はないと、彼に言った。そして少年に、宮殿をあちこち見てまわり、2時間したら戻って来るようにと言った。
「その間、君にしてもらいたいことがある」と、2滴の油が入ったティー・スプーンを少年に渡しながら、賢者は言った。
「歩きまわる間、このスプーンの油をこぼさないように持っていなさい」
少年は宮殿の階段を登ったり降りたりし始めたが、いつも目はスプーンに釘付けだった。2時間後、彼は賢者のいる場所に戻ってきた。
「さて、わしの食堂の壁に掛けてあったペルシャ製のつづれにしきを見たかね。庭師のかしらが10年かけて作った庭園を見たかね。わしの図書館にあった美しい羊皮紙に気がついたかね?」と賢者がたずねた。
少年は当惑して、「実は何も見ませんでした」と告白した。彼のたった一つの関心事は、賢者が彼に託した油をこぼさないようにすることだった。
「では戻って、わしの世界のすばらしさを見てくるがよい。彼の家の知らずに、その人を信用してはならない」と賢者は言った。
少年はほっとして、スプーンを持って、宮殿を探索しに戻った。今度は、天井や壁に飾られたすべての芸術品を鑑賞した。庭園、まわりの山々、花の美しさを見て、その趣味の良さも味わった。賢者のところへ戻ると、彼は自分の見たことをくわしく話した。
「しかし、わしがお前にあずけた油はどこにあるのかね?」と賢者が聞いた。
少年が持っていたスプーンをみると、油はどこかへ消えてなくなっていた。
「では、たった一つだけ教えてあげよう」とその世界で一番賢い男は言った。
「幸福の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ」
パウロ・コエーリョ著、『アルケミスト』より